株式会社オパルス
- 撮影スタジオ
- フォトグラファー
好きなものを「好き」と言える美しい世界
人間の多様な生き方を力強く写し出す
株式会社オパルス代表取締役社長 立花奈央子

フォトグラファー・立花奈央子さんによる2019年の写真集『女装の自由宣言』には、性別という枠組みがないようである、あるようでない、おぼろげな境界線のなか、被写体ひとりひとりが圧倒的な存在感を放っています。その強い目線、自然な笑顔を見ていると、「絶対の“好き”があるっていいな」という嫉妬の気持ちさえ湧いてきてしまいます。個性的な作品を撮り続けている立花さんも、実は過去には常識やコンプレックスに縛られていた時代があったそう。写真集の冒頭には「“女装は自由”と示すことは、過去の自分を救済することに他ならない」とあります。新宿に拠点を置く写真家の強いこだわりをお聞きしました。(インタビュアー 山根 聖美)

個性派プロフィール写真を撮影
女装など趣味の世界からビジネス用まで
事業内容を教えてください
フォトグラファーとしての撮影と、撮影スタジオの運営がメインです。女装男性に特化した撮影スタジオですので、女装に最適な撮影小物なども揃えています。カップルでいらっしゃり、男性が女装し、女性が男装するなんていうケースもありますね。またそれに限らず芸能人や経営者、個人事業主の方々のプロフィール写真など、ご依頼があれば様々な方の撮影を行っています。今では女装男性とビジネスマンの方の撮影の割合は半々くらいになりました。SNSの普及で個人の発信力が求められるようになり、セルフブランディングはより重要となりました。その方の立場や世界観、理想、未来を伝えるプロフィール写真を撮影します。いつもの自分よりも、もっと雰囲気を変えた方が魅力がアップする、仕事が上手くいくのではと感じた場合は、思い切ったイメージチェンジを提案させていただくこともあります。ワンカット15,000円からで、メイクルームもあります。出張撮影もおこないます。また、「TAIYODO」は時間貸しでレンタルスタジオとしても利用いただくことができ、照明機材などもご希望に応じて貸し出しします。

女だからわかる女装の魅力を、
自然光のあるスタジオで最大限に引き出す
御社の強みを教えてください
女装文化は、かつては男性のみの閉鎖的な世界で成り立っていました。女性が女装ビジネスを手がけることは少なく、

フットワーク、多様性、最先端、信用…すべて新宿が私の一番
新宿エリアに起業してみて実際にどうでしょうか
新宿の魅力はたくさんありますが、まずは地の利が大きいということです。出張撮影に出かける時もバスタ新宿があり、リムジンバスで空港にも行ける。人も呼びやすい。ビジネスのフットワークがすごく軽くなります。百貨店やショッピングセンターに時代の先端のものが集まっている。カメラ専門店も多い。数多の飲食店とそれを中心にコミュニティが形成できる。「どんな人も受け入れてくれる」という多様性の大きさもある。そして新宿でビジネスをしているということ自体が信用に直結することもありますね。現在の住まいも新宿エリアです。もともと緑が近くにないと嫌な性分なので「新宿に住めるところなんてあるの?」と言われることもありますが、新宿御苑の広大な緑が近くにあり、景観もよく、住まいやスタジオ周辺は静かで治安も良い。私にとって、日本でここ以上の場所はないと断言できますね。

がん手術の休養期間にコロナ禍へ
コロナ禍において、会社にはどのような変化がありましたか?
緊急事態宣言下は、地方での案件が動かなかったりと全体的な撮影件数も減り、正直なところ影響は多くありました。一番ひどい時は売上がマイナス9割まで落ち込んだこともありましたね。でも実は2019年にがんの手術をし、その休養期間にちょうどコロナ禍に突入したんです。だからこれは不幸中の幸いと考え、しっかりと英気を養いつつ、次のステップに向けて新しい機材を買うなどの準備をしていました。また世の中がステイホーム真っ最中の2021年から取り組んだ仕事のひとつに、「We all eat, It’s a small world」というシリーズがあります。これは夫婦、事実婚、多世帯住宅など、様々なパートナーシップの形を持つ人々の暮らしぶりと食卓をクローズアップしたものです。女装男性の撮影と比べると見た人の印象はかなり異なると思いますが、「自分そのまま、思うままに生きる」という表現のテーマは共通しています。

高IQの「ギフテッド」に能力を活かせる道を
多様性を広めることが私のライフワーク
今後のビジョンを教えてださい
フォトグラファーとしては、これまで同様スタジオ撮影を続けつつ、写真集の企画制作など、
法人概要
名称 | 株式会社オパルス / TAIYODO |
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所在地 | 160-0002 東京都新宿区新宿6-8-5 新宿山崎ビル402 都営新宿線・副都心線・丸の内線「新宿三丁目駅」E1 徒歩4分 |
HP | 株式会社オパルス pdp-tokyo.com フォトスタジオ「TAIYODO」 taiyodo.in |
公務員になるために上京、特技と地域性を組み合わせ独立へ
新宿で起業した経緯を教えてください
絵を描くことが好きな女の子でした。しかし親からは「趣味を仕事にしないで公務員になりなさい」と言われ、他にやりたいことも見つからず、公務員試験を受け、高校卒業後に上京。18歳から公務員として働きながら、趣味で関心のあったLGBT(レズビアン、ゲイ、両性愛、トランスジェンダーの各単語の頭文字を組み合わせた表現)の世界へ足を踏み入れ、新宿2丁目などで行われるイベントやフライヤー(チラシ)作りでアマチュアカメラマンとしてお手伝いしていました。その経験はとても刺激的でした。なにより約20年前の平成の時代では、女装文化は今と比べて圧倒的に理解が低かったですよね。社会的な風当たりも強いなか、自分が好きであることを堂々と「好き」と言える彼らの力強さは、なんて美しいんだろうと感じていました。公務員生活は6年続きましたが、退職後はWebライターなどをしながら、カメラの技術もより磨いていきました。カメラマンとしてだけであれば、ファッション系、グラビア系などすでにスペシャリストも多く太刀打ちできないけれど、新宿という地域性と、自分が持つスキル、LGBTへの理解などを組み合わせれば、独自性のあるビジネスが生み出せるのではないかと考え、2009年に新宿6丁目で女装専門の撮影スタジオを立ち上げました。その後1丁目、また6丁目と拠点を移し、2012年に株式会社オパルスとして法人化。国内外で個展も開催し、これまでに撮影した女装男性の数は2000人くらいでしょうか。