通常インタビュー

私は就職氷河期のあおりを受けた、いわゆるロスジェネ世代（※）どまんなか。シビアな社会情勢のなか、学生時代にレストランで働いていた経験から、そのまま飲食業界に就職しました。首都圏から関西まで多業態で展開する飲食大手で、ヒラ社員から少しずつ成果を積み重ね、事業本部長（常務取締役）まで務めました。しかし、その会社が別の飲食グループに買収されることなり、そのタイミングで退職。今の会社のオーナー企業である社長と出会い、スーパーバイザーとして入社しました。「焼肉 ホルモン道場 闇市肉酒場　曙町店」はいくつか系列店舗もありますが、オーナー企業を中心にそれぞれが1店舗につき1社ごとで運営しています。私は2013年から、この曙町店を経営する会社で、現場に立ちながら代表を務めています。

※ロスジェネ世代＝「ロストジェネレーション」の略。1970年から1984年頃に生まれた世代で、バブル崩壊後の約10年間の就職氷河期に就活を行ったため、希望通りの仕事に就ける学生は限られた。

横浜市中区、伊勢崎町・関内エリアの国道沿いにある「焼肉 ホルモン道場 闇市肉酒場 曙町店」を経営しています。この場所でオープンしてから30年近く経過していることもあり、近隣にお住まいの方や、場所柄、深夜まで働く方も多いので、仕事のあとに立ち寄ってくださる常連さんもとても多いのが特徴です。17時から朝方5時までの営業時間で、早い時間帯はご家族連れやサラリーマンの方が多く、日付が変わるとお客様の層はガラリと変わります。この朝方まで続く賑わいはこの街ならではですね。飲食大手で都心の店舗にいた時とは正反対で、人間味あるこのエリアの雰囲気が自分にとってはすごく居心地がいいです。店舗は基本年中無休。年末年始も変わらずお店を開けてお客様をお待ちしています。

肉やホルモンは神奈川県内で長くから取引実績のある信頼できる業者から、鮮度の高いものを仕入れており、肉・ホルモンからサイドメニューまで、焼肉店としてはかなり豊富なメニューだと自負しています。とくにホルモンは甘い脂身の黒毛和牛から「ミノ」「ハツ」「センマイ」「ハツモト」「豚ののどぼとけ」「おっぱい（豚乳房）」など希少部位も含めて常時24種類。ホルモンに漬け込む秘伝のみそダレも当店ならでは。焼肉は20種類以上、サイドメニューも60種類以上あり、コムタンなどのスープ系やビビンバなどのご飯系は、1人前とハーフサイズをそれぞれ用意しています。メニューが豊富なので、肉を焼くのに慣れていない方にはコツをお伝えすることもあります。たとえば脂身の付いたホルモンは、まず皮目から焼き、十分に火が通ったら脂身をほんの少し炙る程度でOK。何度も裏返して脂身まで焼き過ぎてしまうと、美味しい脂が全部落ちてしまい、すごくもったいないんです。ただ、うちの常連さんはすでにマスターされてすごく焼き方が上手い方も多いですね。

創業当時は周囲に焼肉店がそれほど多くなかったので集客は安定していましたが、今はこのお店の1km圏内に同業の焼肉屋が約20店舗にまで増え、実は密かな焼肉激戦区です。そんななかでもお客様に選んでいただくためには、飲食店としての基本を常に整え、お客様に安心して食事を楽しんでいただくことが重要だと考えています。とくに焼肉店は生肉を扱うので、衛生環境を整えておくことは最優先です。飲食店はたった一度でも食中毒などの不祥事があれば一気に信用を失いお客様が離れていきますから、慎重に慎重を重ねても、やり過ぎではないと考えています。当たり前に安全で、当たり前に美味しい。目立つとか「映える」とか、そんなことより「普通」を維持することが飲食店の基本だし、実は一番難しい。ロスジェネ世代だからこそ、地道なことに汗をかくことの重要性をわかっていると思っています（笑）。

2024年は大幅に業態をパワーアップさせる予定で、現在はその準備にも追われています。まずは春に店舗を改装し、リニューアルオープンします。新しい店内はキッチンが大きく移動し、これまで以上に居心地の良い空間になります。また、コロナ禍以降、外食よりも自宅で良い食材を調理するご家庭も増えたことから、お店で提供している焼肉やホルモンのほかに「すき焼きセット」「しゃぶしゃぶセット」なども用意し、冷凍したものをご自宅まで届けるECサイトを構築します。さらに店舗前には冷凍自販機も設置し、いつでも気軽に当店の美味しいお肉を、これまで以上に多くの方に味わっていただけたらと思っています。
※事業再構築補助金により作成