通常インタビュー

折り紙のように丁寧に、繊細に。
カウンターで愉しむ極上イタリアン

ITALY’S BISTRO restaurant origami

オーナーシェフ 天野 智詞

飲食業

ITALY’S BISTRO restaurant origami オーナーシェフ 天野 智詞

毎日自転車で1時間かけて通勤するというオーナーシェフの天野さん。オープン間もなく忙しく過ぎてゆく日々でも、自転車に乗っている時は唯一「自分と対話できる時間」だそう。日本とイタリアの有名店で十分な経験を積み、いまは外苑前のカウンターキッチンから料理を提供しますが、イタリアンの概念を超えたダイナミックなメニューの数々は、自転車に乗りながら感じる季節の移ろいや東京の空気から構想が生まれるのかな、と思いました。素敵なお店の名前も、由来をお聞きしてさらに好きになってしまいました。(インタビュアー 山根 聖美)

ITALY’S BISTRO restaurant origami

銀座の有名店や本場イタリアで修行し、独立

━ 出店までの経緯を教えてください

自然豊かな岐阜県の飛騨高山で、庭に育つ野菜を収穫し食べながら育ちました。小さな頃に母が毎月届くお菓子作りキットのようなものを購入していて、中に入っている新しい調理器具を使ってお菓子を作ることが大好きでした。青春時代はよく友人を家に呼んで料理を振る舞ったりもしましたし、料理は自分にとっていつも身近で楽しいことでしたね。高校を卒業したらすぐ料理人になろうと思ったのですが、親からのアドバイスもあり大学受験をしてみたら東京の大学に合格。なんとなく上京してキャンパスライフを送ってみたものの、料理以外の勉強は自分にとってあまりにも将来が見えず、1年で中退して大阪の辻調理師専門学校へ。20歳から現場に出て銀座の人気店「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」でイタリアンの重鎮・落合務氏に師事し、14年間働きました。オチアイは多忙な現場でしたから、料理人としての基礎を積みながら、どんなことがあっても動じない精神力も得ることができたと思います。その後イタリアに向かい、トスカーナ・シチリア2都市のミシュラン二つ星レストランで研鑽を積みました。本場では食材の使い方や組み合わせなどが日本のイタリアンとはまったく異なり「料理ってこんなに自由でいいんだ」と大きな刺激を受けました。帰国後は人形町「イル・プローモ」で5年間シェフをつとめ、いよいよ独立へ進もうというタイミングでコロナ禍に突入。出店の機会を伺っていたところ、偶然に外苑前の静かな良い物件に出会うことができ、2022年6月に「レストランオリガミ」をオープンしました。

ITALY’S BISTRO restaurant origami

目の前でできたての美味しさと愉しさを提供

━ 事業内容を教えてください

カウンターキッチンを中心に、お客様の目の前で調理し、料理を提供するイタリアンビストロです。その時の旬の肉や魚、野菜を信頼できる生産者から仕入れています。長い経験で得た料理人としての感性を使って、そのとき最も良いと感じた食材と調理方法でオリジナルメニューを構成しているため、これぞイタリア料理…という感じではありません。その驚きも含めて楽しんでいただきたいと思っています。コースはおまかせコース(9,000円税込)1種類のみで、前菜2種・魚料理・パスタ・肉料理・リゾット・デザート2種・カフェをベースに10種類以上のメニューをお召し上がりいただけます。そのほかアラカルトもご用意しています。ランチは土曜と祝日のみの営業でショートコース(7,000円税込)となっています。

ITALY’S BISTRO restaurant origami

折り鶴のように料理で文化の垣根を超える

━ お店のこだわりを教えてください

イタリアで語学を学びながらミシュラン二つ星レストラン働いていたとき、ルームメイトに折り鶴を折って見せたところ「まるでマジックだ」とすごく喜ばれ、外国語を流暢に話せなくても楽しい時間を過ごすことができました。外国の方からすると、折り紙を折る日本人の手先はすごく器用に感じるようです。折り紙って、折る工程で手を抜くとちょっとしたズレができて、それが最後の仕上がりに影響したりしますよね。実は料理も同じです。仕入れから仕込み、仕上げの調理まで折り紙のように繊細で丁寧な段階を経て作り上げていく。千羽鶴という日本独特の文化も近年は賛否両論ありますが、千羽もの鶴を折る行為に意思を宿らせる千羽鶴は、多くの人が無宗教である日本において僕はとても素敵だと思っています。オリガミでも目の前のお客様のために料理を作り、食べていただくことでその気持ちを届けたい。店名にはそんな思いが込められています。

ITALY’S BISTRO restaurant origami

まっすぐに「おいしいでしょ」と言えること

━ 仕事をするうえで大切にしていることはなんでしょうか?

自分に嘘をつかないということです。大所帯のレストランで働いていた時はたくさんのスタッフの目があったけど、今は1人きりなので自分が楽をしようと思ったらいくらでもできてしまう。すべて自分次第だからこそ、自分がお客様の立場だったら、という視点から厳しく考えるようにしています。とくに料理はお客様が口に入れるものだからこそ、ほんの少しでも鮮度に不安があるものは提供しない。仕込みも妥協しない。金額設定も敷居を上げ過ぎない。キッチンとホールが分かれたレストランにいると「お客様のために」と思ってもその表情をリアルに見ることはできません。けれど今は目の前でお客様の表情を見ながら作ることができる。その分ごまかしはきかないし、緊張感もありますが、自信を持って「これ、美味しいでしょう」と言い続けていきたいですね。

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永くオリガミを愉しんでもらうために

━ 今後のビジョンを教えてください

オープンしてまだ2ヶ月あまり(2022年8月現在)、すでに懇意にしてくださるお客様も増えつつあり、とても順調ではありますが、まだ突っ走っている段階というのが正直な気持ちです。寝る時間も削って仕込みに朝方までかかってしまったりと、お客様に満足していただくために色々模索しているところですが、このままのやり方がずっと続けられるとは思っていません。いずれスタッフも増やし、労働環境も変えていきながら永くこの場所で続けられるようなやり方を固めていくのが当面の目標ですね。窓を開ければ青山小学校の校庭が広がり、夜はとても静か。お客様にはレトロなビルの奥にある異空間で、至極のひとときを味わっていただきたいと思っています。

PROFILE

ITALY’S BISTRO restaurant origami オーナーシェフ 天野 智詞

ITALY’S BISTRO restaurant origamiオーナーシェフ 天野 智詞

銀座「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」で修行し、イタリアンの重鎮 落合務氏に師事。

トスカーナ『da caino』(ミシュラン二ッ星)シチリア『Duomo』(ミシュラン二ッ星)の姉妹店『I BANCHI』で研鑽を積む。

帰国後、人形町「イル・プロフーモ」でシェフを務める。

第一回ACCI(イタリア料理協会)イタリア料理コンテストにてグランプリを受賞。

2022年6月「restaurant origami レストラン オリガミ」をオープン。

営業時間/17:00~22:00
住所/〒107-0062 東京都港区南青山2丁目22−14 フォンテ青山 103
定休日/日曜日・不定休
電話番号/03-6683-2852

restaurant-origami.tokyo

2022年8月28日 公開

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