機動力ある外装工事で静岡から東京へ
職人を守り、技術を継承することが使命
株式会社スエヒロ工業
代表取締役 櫻井弘紀
塗装業・防水工事・建設業・大規模修繕工事
23歳で代表の肩書きを持つことになった、言い換えれば持たざるを得なかった櫻井社長が、これまで暗中模索しながら目指してきたのは、一貫して「オヤジの背中」と「自分を信じてついてきてくれた人への恩返し」。家族同様の仲間である社員や協力会社との対話を繰り返し、誰かを真似することなく築いてきた独自のメソッドが、時代の波とマッチして静岡から都心へと大きく広がり始めています。飾らず、等身大で話してくださる姿からも会社と社長が愛される理由がわかりました。(インタビュアー 山根 聖美)
防水工事から建築全般へ幅広く対応
東京支店では、主に防水を含む塗装工事、外装工事、マンションの大規模修繕などを行っています。本社のある静岡では、ほかにも新築物件の建築や、リノベーションなども行っています。先代から続く防水工事に使う資材の仕入れ先がほとんど東京で、全国的にみても防水に強みのある会社は少ないため、仕入れ先との繋がりから首都圏の施工依頼が増えてきました。そのため東京にも支店を置き、迅速に対応できる体制を整えたんです。今では中堅ゼネコン会社から請け負う新築物件の防水・塗装工事なども任されるようになり、東京支店を設置してまだ数年ですが売上も右肩上がりで推移しています。私も週に一回は本社から東京に来てフォローアップしています。
絆づくりや福利厚生で、高い技術をもつ職人をまもる
スエヒロ工業では質の高い工事を迅速に手配するため、社員だけでなく約40社からなる「櫻和会(おうわかい)」という協力業者会を作り、連携しています。このメンバーはほとんどが弊社専属の職人さんたちで、いわゆる“一人親方”の個人事業主も少なくありません。業界全体では、技術力のある職人が減りつつあり、都心の案件などでは営業力はあっても職人が見つからない…なんていうケースもあるんです。櫻和会では、この業界を支える職人たちの高い技術力を継承していくため、日頃から勉強会やコミュニケーションを欠かしません。社員でなくても協力会社の職人が専門技術を習得するために受ける資格試験には費用を補助するなど、研鑽のためのサポートも惜しみません。こうした多くの職人が常に控えてくれ、機動力の高いところが一番の強みだと思っています。また、社員や協力会社の方たちへの福利厚生のひとつとして、弊社が別事業で経営しているトレーニングジムを使ってもらっています。利用している社員からは、体を鍛えることで仕事にも活かせ、気持ちも明るくなると好評です。建設業で働くことに魅力を感じてもらいやすく、求人への反応も40倍に跳ね上がりました。今は本社のある静岡だけですが、いずれ東京にもジムを作りたいですね。
「信じて良かった」と思われる経営者に
人の力があってこその仕事です。ですから、関わるすべての人を大事にすることが一番ですね。先代が亡くなり社長になった当時は、自分よりもずっと年上で経験豊富な職人さんたちにとって、自分はすごく未熟な存在でした。それでも信じてついてきてくれたことに感謝し、「この会社に関わって良かった」と心から思ってもらいたい。そのために、常に対話を欠かさず、それぞれの立場の気持ちを汲むように努めています。経営本などは読むと自分の軸がブレそうな気がするのでまったく読まないのですが、だからといって自分の勘だけでやっていけるほど甘い世界ではないことも分かっています。だから、社員や協力会社の皆さんが高いモチベーションで働けるにはどうしたらいいのか、周囲に相談しながらそればかり考えています。そんなことを続けていたら、自然にお金がついてきたという感じです。
親方の品質・技術を繋ぎ、首都圏でも力を発揮したい
外装専門工事会社の舵取り役として、専門技術のある職人を育て、腕を繋いでいくことが使命だと思っています。そのための仕組みづくりを進めています。たとえば、櫻和会に所属する協力会社の職人の多くはうちの専属で、ほぼ社員といいますか、家族同然です。ですから、コロナ禍もあり社会情勢も不安定ななかで、もし生活に困って職人の道を捨ててしまうくらいであれば、まずはスエヒロ工業で社員登用し、生活を保証したうえで若手を育ててもらい、また独立したければ応援する、という制度をはじめました。2021年夏までの時点ですでに3人の職人がこの制度を利用し、東京支店でも社員の職人として活躍しています。また建設業界は女性の活躍が遅れていると言われていますが、本社では女性にもっと輝いてほしいと積極採用し、静岡県で3社目の「えるぼし認定企業」(女性活躍推進企業認定)となりました。会議室をキッズルームにするなど、とにかく社員や協力会社の職人が前向きに仕事に取り組んでもらえるように、既成概念にとらわれず、現場の声を汲み上げていきたいです。東京支店では、ゼネコン企業との繋がりが今まさに広がっているところなので、すごく勢いがあります。建物のリニューアル工事なども積極的に請負い、東京都心での施工案件をより増やしていきたいですね。
PROFILE
株式会社スエヒロ工業代表取締役 櫻井弘紀
- 【本社】
静岡県沼津市足高287-29
TEL 055-923-4721
FAX 055-923-4600 - 【東京支店】
東京都港区南青山2丁目22-2石山ビル2F
TEL 03-5843-1601
FAX 03-5843-1602 - 【札幌営業所】
札幌市中央区南12条西1丁目2-20-206
TEL 011-311-4222 - 【ヘルスケアウェルネス事業部】
eIGHT GYM(エイトジム)
静岡県駿東郡長泉町南一色8-1
TEL 055-943-9330
FAX 055-943-9350
HP https://8gym.jp
2021年9月11日 公開
防水職人の修行途中で社長に 事業の幅を広げ東京へも進出
父である先代が、建物の屋上などに施工するアスファルト防水という技術で職人として独立しており、小さな頃からずっと作業着姿の父の姿を見てきました。汗をたくさんかきながら働いて、仕事が終われば職人仲間と夕方から缶ビールで一杯…なんていう光景は、幼な心に「すごく楽しそうだな、大人っていいな」と思っていましたね。自分自身は高校卒業まで極真空手の選手として活動していて、高2の時に全国大会で準優勝するなど、空手一色の生活。時折アルバイトで職人仕事を手伝っていたので、漠然とではありますが自分もいつか父のように手に職を付けようと考えていました。正直、学生時代はやんちゃで素行も褒められたものではなかったので(笑)、親に勧められた大学進学は断り、専門学校で建築デザインを学び、2級建築士の資格を取得。その後は父が静岡県で平成3年に設立したスエヒロ工業の下請け先に修行に行き、2年間防水工事の職人として働きました。しかし、ようやく仕事に慣れてきた頃、父の病気が発覚しスエヒロ工業に入ることに。その後1年で父は他界し、まだまだ経験の浅い23歳の自分が後を継ぐことになりました。まだ自分1人ではなにもできなかったので、周りに頼りながら会社と一緒に自分も成長してきたという感じです。社長になった初年度の売上は4億7千万円でしたが、おかげさまで2020年度は11億円となり、社員数も倍増しました。本社は静岡ですが首都圏の仕事も増えてきたことから、2019年に南青山の東京支店を設置しました。