インタビュー記事

顧客との“密度”をAIがはじき出す
営業の新たな羅針盤を開発

株式会社Srush

代表取締役 樋口 海

システム開発・運営・販売

株式会社Srush 代表取締役 樋口 海

筆者もかつては営業畑にいたことがあり、なかなか受注がとれない時は精神的にもつらく、売上を上げるために口八丁手八丁…なんて記憶も。そんな営業のネガティブイメージを根本から覆すかもしれないSrushの仕組みは、聞けば聞くほどワクワクするものでした。営業とITに精通した怖いものなしのビジネスマンの顔と、話していくと時折一児のパパとしての穏やかな表情もあり、魅力あふれる樋口社長でした。(インタビュアー 山根 聖美)

株式会社Srush

酸いも甘いも嚙み分けてわかった「営業の理想形」

━ 起業までの経緯を教えてください

大阪で育ち、大学入学と同時に上京。NTTコミュニケーションズの法人営業部門で6年ほど働きました。若手としては高いレベルで仕事をやり切れたと思っていますし、実際に全社表彰や社長賞を受賞したり、大手新聞にニュース掲載されるような案件を手がけたこともありました。営業が好きで、これからも営業で生きていくつもりでしたが、一方で大きな組織で仕事をしながら「あと一歩踏み込んだ営業ができていない」という思いもありました。営業の究極の目標は、自分のノルマを達成することではなく“お客様の売上を上げること”。今の自分には商いや経営の視点が足りていないと感じ、会社を離れ大学院に入りMBAを取得しました。経営について学ぶ日々はとても面白く、次第に起業についても考えるようになりました。大学院の夏休み中にはシンガポールで日系製造業の社長について回らせてもらい、経営者の考え方、仕事の仕方などを学び、帰国。その後は縁あって製造業の原価計算ソフトを開発する企業の立ち上げを経験しましたが、そこでもやはり“自己都合の営業”という壁にぶち当たりました。営業って、組織としての売り上げ目標があって動く。でもこれってお客様には全然関係ないことですよね。営業という仕事が、自分の売上を目指す世界ではなく、お客様との信頼関係を構築していく世界になればいい…そんな思いから、クライアントとの関係性を数値化し、営業マンの次にとるべきアクションが明確になる、これまでにない営業DX(デジタルトランスフォーメーション=IT技術によるビジネス変革)のためのソフトを開発しました。会社設立は2019年11月のことです。

株式会社Srush

歩き回って汗をかかなくても、営業ってもっとスマートにできる

━ 事業内容を教えてください

セールスエンゲージメントツール「Srush」の提案です。日本における営業マンは、炎天下でもスーツを着て歩き回る…とか、そんなイメージではないでしょうか。また日本はものづくりや研究が評価される文化があり、営業部門は会社でも肩身が狭いなんてことも。でも海外ではまったく違います。例えばアメリカでは、国土が広いのでそもそも遠距離のお客さんが多く、そのため訪問件数は重要視されず、いかに受注率を上げるかということに重きが置かれています。それに売上をあげられるのは、社長か営業マンだけ。営業マンは経営者並みのことができるということで、評価も高いです。一方、日本は営業マン個人の努力・根性に依存した自転車操業であることが多く、業務のIT化が進んでいたとしても事務処理を手書きからペーパーレスにした程度。持っている顧客データも十分に活かせていないパターンが多いですね。「Srush」は、営業担当が持っている顧客や案件の情報だけでなく、顧客からのメールの反応速度や、商談から商談までの期間などからAIが自動評価し、顧客とのエンゲージメント(関係性や密度)をリアルタイムでスコアリング(点数化)します。「商談で部長までいったから受注確度は50%」「あの担当者には何度かゴルフ接待しているし」…なんていう営業マンの“勘”ももちろん大事で、これは「主観」の情報。それに加えてAIが評価する「客観」の情報が複合されます。わかりやすくデートで例えましょう。「デートで美味しそうにアイスクリームを食べていたからデートは成功だ」というのは主観。次のお誘いのレスポンスの速さまで出して、正しい角度でスコアを出すということですね(笑)。

株式会社Srush

今やることが「見える」から、受注を逃さない

━ 御社の強みを教えてください

Srushを導入すると、営業部門のマネージャーにとっては「いまどの案件を最優先すべきか」が一目瞭然で見えるようになります。エンゲージメントスコア(数値化された顧客との関係性)と受注金額がグラフで表示され、より高い売上が見込める顧客に対し、どのタイミングで、どんな方法でアクションをとるのが最適なのかまで分かります。つまり、受注できたはずの案件を失注してしまったり、非効率なアクションがなくなることで、売上アップに繋がるということです。また、僕自身が会社員時代に営業以外の事務作業に追われることが嫌でしかたなかったので、徹底的に営業担当者が楽になる機能も追求しました。スケジュール調整機能、ルート検索から交通費の算出、ZOOMとの連携、クライアントへのメール本文自動作成など、別アプリを立ち上げたりとなにかと手間のかかる作業をほぼすべてSrushがあれば簡単にできるようにしました。営業担当が気軽に使える機能を備えれば、Srushにもそれだけ多くのデータが集まり、解析の精度も高まります。もともと営業の仕事はリモートで行うような部分がありましたが、コロナ禍でさらに加速し、マネージャーは担当者の仕事ぶりが見えにくくなっている部分もあります。Srushを使えば営業の動きがリアルタイムで見えるようになるし、担当者にとってもクライアントとの関係が良好になり、目先の売り上げに追われないという好循環を生み出すことができます。

株式会社Srush

人が好きだから、徹底的に関わる

━ 社長が仕事をするうえで大切にしていることはなんですか?

「会社は人である」ということです。人の力がなければ会社は大きくなれないし、お客様をハッピーにすることもできない。僕も今いる約20人のスタッフを心底信頼していますし、できる限り1人で抱え込まずに仕事をお願いするようにしています。そうすれば他のスタッフも助け合う風土が生まれ、総動員でより会社を大きくしようという気運が生まれます。とにかく人が好きだから、営業も好きなんでしょうね。Srushを利用しているお客様に対してもソフトを提供して終わりではなく、導入段階からその会社の営業プロセスにかなり踏み込ませてもらいます。はじめ1週間くらいは一緒に外回りをして、お客さんに成り代わって営業し、その会社の案件や顧客をリサーチしたうえで、KPI(重要業績評価指標)の見直しを行い、これまでの営業スタイルをガラリと変えてもらうこともあります。ほぼコンサルと言えるくらい濃密に伴走支援し、Srushを導入することでどのくらい売上が上がるかまでレポートします。導入後も週1回ペースで2時間くらいミーティングしてますし、納得して活用してもらえるよう、今は利益度外視ですね。

株式会社Srush

「営業マンの歩き方」を確立させ、他分野でも応用を

━ 今後のビジョンを教えてください

これまでの自分の営業経験を振り返って、一番忙しくて一番楽だったのは、クライアントから「樋口さんこれどうだったっけ?」「他社からこんな見積もり来てるけどどう思う?」など、相談が次々と舞い込んでいたとき。つまり顧客と良好な関係を築け、案件に事欠かなかったときです。セールスが常にこういう状態であれば最強です。日本における営業のノルマとか訪問件数とかっていう評価基準に一石を投じ「営業マンの新しい地図をつくる」。これはSrushのコーポレートスローガンでもあります。受注を達成するのは最終的には営業マンの手腕によるものですが、Srushを通じてラストワンマイルまでの歩き方を作りたい。大学院で学んでいたときに思いましたが、経営学や商学、金融学などはあっても“営業学”てないんですよね。いつかデータを集約し、営業を学問にしたいという思いもあります。また、顧客のレスポンス速度など営業の手腕ではコントロールできない部分を、ビッグデータとAIを活用して示唆を導き出すSrushの仕組みを、営業以外の分野でも使えないかと考えているところです。実際にSrushのシステムを社内人事に活用したら、退職者はエンゲージメントスコア(ここでは愛社精神や信頼関係など)が低い社員だったなんていう実例もすでにあり、人材分野や人事分野などでの応用も見込めそうです。今はBtoBのみですが、いつか家族や恋人、友達との関係性をスコアリングするような、BtoCの展開もできたら面白いですね。難しいと思われる人間関係が、ITの力を使って少しでも幸せな方向に向かっていけたら最高です。

PROFILE

株式会社Srush 代表取締役 樋口 海

株式会社Srush代表取締役 樋口 海

NTTコミュニケーションズの法人営業部門にて大手自動車を担当しグローバルインフラの導入に従事し、全社表彰や最高評価を受賞。その後、シンガポールの日系製造業にて営業戦略を担当。帰国後、製造業向け会計ソフトウェアを提供する会社の立上げを経て、10年の法人営業経験から自身が感じた営業の課題を解決すべく株式会社Srushを創業。
早稲田大学教育学部卒、一橋大学大学院商学研究科修了(MBA)。

業務内容:Srushの企画・開発・運営・販売

会社設立:2019年11月21日

srush.co.jp

2021年3月9日 公開

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