通常インタビュー

紛争地の深層に潜む問題を調査し、本当の平和を

特定非営利活動法人 インターバンド

代表理事 小峯 茂嗣

特定非営利活動法人 インターバンド 代表理事 小峯 茂嗣

紛争地に自ら足を運び、現地調査を行う人…取材前はどんな方なのか想像もつきませんでしたが、お会いしてみると物腰柔らかく、人懐こい笑顔で、良い意味で期待を裏切るお人柄でした。その理由は、小峯さんの理念のひとつ「誰に対しても尊敬の念を持つ」にも繋がっていたのでした。(インタビュアー:山根 聖美)

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27歳で独立、恩師が立ち上げた法人を継承

━ 起業までの経緯を教えてください

実はインターバンドは、僕の恩師である首藤信彦さん(元大学教授、のちに国会議員)が1992年に創業したもので、僕が創業者ではないんです。僕は学生時代から紛争問題について関心があり、大学で専攻していた学部とは別の学部で当時教授をしていた首藤さんが、企業経営の危機管理のほか、テロや紛争問題の研究者であると友人に聞き、首藤さんの活動を手伝う学生ボランティアとして参画したのがきっかけでした。大学を卒業したあとも、アルバイトや社労士事務所で働きながらインターバンドのサポートを続けていました。27歳のとき、首藤さんがアフリカのルワンダ紛争後の復興と民族和解の活動を始めると聞き、僕自身とてもルワンダ問題に関心があったので、意を決して会社を辞め、本格的にNGO活動家としてアフリカに赴くことに決めました。紛争が落ち着いたとはいえ、まだ銃弾の跡が生々しく残るルワンダに2ヶ月ほど滞在し、首藤さんが中心となり立ち上げられた「アフリカ平和再建委員会」メンバーとして紛争で夫を失くした女性の経済的自立に向けた洋裁学校のサポートなどを行いました。現在は僕がインターバンドの代表理事を務めています。

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表面的には見えにくい紛争地の問題を調査

━ 事業内容を教えてください

活動のメインは「ファクトファインディング」、紛争地の現地調査・実態把握です。現代は情報があふれてはいますが、報道される情報には偏りがあることも多く、さらにフェイクニュースなんてものも最近は出てきました。我々は自ら現地に足を運び、調査を行い、それに基づいて解決のプロジェクトを組んだり、日本社会に発信したり、政府に提言を行うなどをしています。たとえば、表面的には紛争が終結したような場所でも、まだ武器があちこちに散乱していたり、選挙制度が確立されておらず、民主化が進んでいないような地域が多くあります。現地住民の人たちが本当に安心して暮らせるための、小規模だけど実験的な取り組みを行なってきました。例えば現地の生活再建のサポート、選挙監視活動などです。現在は、とくにミャンマーのロヒンギャ難民問題、香港デモ、朝鮮半島の和平問題などに力を入れていこうとしています。

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同じ目的を持つエキスパートが集まって活動

━ 御社の強みや特徴はなんでしょうか

設立以来、世界各地で民主化・平和構築を進めるために様々な活動をおこなってきました。現在は僕をはじめ8名の役員と、他にも多くのOB・OGがいますが、国際的な実務経験のあるスペシャリストばかりです。「Inter Band」という法人名は、「共通の目的を持って行動する小集団」(Band)つまり紛争予防・平和再建に関して個々が主体性を発揮してバンドを作り、それを繋げる(Inter-Band)ということが由来となっています。先見性を持ち、人があまり注目していない地域や、注目されなくなった紛争地などをフォーカスし、2度とその地で紛争が再発しないような予防策をたてることが目的であり、ほかにはない強みだと思います。

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尊敬を念を持ち、相手の立場について考える

━ 仕事をするうえで大切にしていることはなんですか

紛争がかつて起こっていた場所で、現在は表面的には穏やかだけれど、奥深くに潜んでいる見えにくい問題というのが様々あります。差別問題や、宗教問題などもそうです。それらを明確にしていくためには、現地の人たちとの信頼関係は欠かせません。良好な関係を築くために、現地の人たちへの尊敬の念を持つことが重要です。大規模な組織の大規模な人道支援はシステマティックではありますが、人の顔が見えづらく、本当の意味での支援に繋がっていないケースもあります。まずは人間同士の付き合いをして、相手の立場に立って考えることが必要です。もうひとつ、かえりみられない問題や人々に光を当てていきたいと思っています。たとえば、ロヒンギャ難民の悲惨な現状は注目を浴びますが、難民を受け入れている地元の人々の声が伝えられることはありません。また、国連のPKO(平和維持活動)が紛争地域で活躍していますが、PKO要員が援助物資と引き換えに難民の少女を買春することもあるということもあまり知られていません。声なき人々の声を聞くことを大切にしたいです。

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同じ志の仲間を増やし、問題解決への道筋を

━ 今後のビジョンを教えてください

僕は大学で、学生に国際協力論や平和学についての講義をおこなったり、アジアやアフリカでの実習プログラムを企画していますが、以前、ルワンダに行った教え子の1人が、最近NPO法人を立ち上げました。ケニアのソマリア難民の若者たちと対話をおこない、テロリストにならないよう未然に防止するという取り組みです。インターバンドは、いまは小規模集団で活動を行なっていますが、今後、こうした団体を含め、より繋がりを拡げていきたいです。また、ロヒンギャ難民問題については、現地の調査レポートを本として出版できるようまとめているところです。北朝鮮問題では、現地の学術研究機関と日本の研究者との学術交流をはかり、国と国との繋がりを深めるために前進できないか、模索しています。

PROFILE

特定非営利活動法人 インターバンド 代表理事 小峯 茂嗣

特定非営利活動法人 インターバンド代表理事 小峯 茂嗣

東京都新宿区四谷4-6-1 四谷サンハイツ511号室

http://www.interband.org/

Twitter: @Interband_Japan

2019年12月23日 公開

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