自由な発想と幅広い人脈
日本酒で世界中を盛り上げたい
サケ・ラバーズ株式会社
代表取締役 今西 由紀
インバウンド・コンサルティング業
日本酒が好きで、酒蔵巡りが趣味だったことが高じてサケ・ラバーズ株式会社を設立した今西社長。
新元号のお祝いにオリジナルで日本酒を作るなど、好きだからこその企画を沢山たてられているのがとても印象的でした。
(インタビュアー 木内)
さまざまな面から日本酒と酒蔵をバックアップ
日本酒や酒蔵の文化・歴史を広めるために、国内・海外問わず、酒蔵見学ツアーを企画したり、プライベートブランドを作ったり、酒蔵さんのインバウンドのお手伝いをしています。また、最近では酒蔵さんの海外販路拡大のお手伝いなども始めているところです。たとえば、日本酒を知ってもらい、気軽に楽しんでもらえるようにと日本酒と小冊子のセットが毎月届く「日本酒の定期便」を考案。日本酒好きのお客様に喜ばれています。
海外の旅行者向けには、日本酒とおいしい日本食が楽しめるお店を掲載した「SAKE SPOT MAP」を作成しました。こちらは日本酒や酒蔵、その地域に興味をもってもらえるような内容を掲載し、観光協会などにも置いていただいています。
ほかにも月2回ほど、東京ではなかなかお目にかかれない地方の小さな酒蔵さんが造っているお酒を紹介するイベントを行ったり、飲食店にお酒を入れてもらえるように交渉をする販路拡大のお手伝いをしたりしています。
「令和酒」という自社ブランドは、今年5月1日にお披露目パーティーを行いました。当日訪れた方の半分以上は海外の方。このように、日本酒に興味をもっている海外の方も増えています。もっと知ってほしい、飲んでほしいという想いで新しいことをどんどん企画しています。
人と人とのつながりから日本酒を世界に広めていきたい
インバウンド事業を行っているので、語学に強いメンバーが揃っています。国際色が豊かで、国内だけでなく海外への人脈も広いのが特徴です。一緒に働いているメンバーも私自身も、公私共にさまざまな人脈があり、イベントなどで築いてきた人脈もたくさんあります。何か困ったときにすぐに相談できる人たちが多いというのは心強く、特に海外の方は日本人では気づかない細やかな部分にもアドバイスいただけることが多いので、そういった貴重な意見からより良いものを作り上げることができています。
今回プライベートブランドを作るうえでも、その強みを大いに活かせました。商品のラベルのデザインは、乳がんを患っているアメリカ人のデザイナーさんに依頼し、日本対がん協会のピンクリボンとコラボレーションをして、収益の一部を寄付しています。こうした取り組みはおそらく日本では初めてです。当社の強みである広い人脈を活かせた結果だと思います。
すべては日本酒のファンを増やすために
目的に対してどのような方面からアプローチすれば良いかを、いつも大切にしています。
たとえば、「日本酒は悪酔いする」「おやじくさい」…など、日本酒に対してあまりよくないイメージをもっている方もいます。そのような先入観から日本酒を飲まない方やお酒が弱いから日本酒を飲まないという方もたくさんいらっしゃいます。最近では、低アルコールの商品のラインナップも増えてきているので、少しずつ飲み比べて楽しんでもらいたいと思いイベントの企画も行っています。
ほかにも、若い世代に日本酒を知ってもらいたいと思い、2019年3月31日に大学生とコラボレーションをして、「日本酒成人式」というイベントを開催しました。大学生は無料で参加できますし、酒蔵さんは若い人に飲んでほしいという想いがあるので双方にメリットがあります。当日は100人以上集まり、日本酒を飲んだことがない方や普段あまり高価な日本酒を飲んだことがないという方にも楽しんでいただけました。もちろん、学生さんは金銭的にも日常的にたくさん飲めるわけではないのですが、良いイメージがあれば何かのきっかけで飲もうと思ってくれますし、興味を持ってくれるきっかけになれば嬉しいです。
海外の方向けとしては、シンガポール料理と日本酒を味わうイベントを開催予定です。日本酒は味のバランスがいいので、実はどんな料理とも相性がいいのです。海外の方だけでなく、日本の方も参加できます。
とにかく日本酒のファンを増やしたい、増やすためのお手伝いをしたいと思っています。きっと、日本酒の味を知れば知るほど、違いや今までのイメージとの違いに気づいていただけるはずです。
柔軟な発想から地域活性を促したい
日本酒業界が盛り上がっていくことが理想です。日本酒を広めたいという想いはもちろんですが、その背景を知ってもらい、文化や歴史が眠る酒蔵さんや地域に足を運んでいただきたいと思っています。
現在、PRの一環として、日本酒についてのアニメーションを企画しています。酒蔵の歴史・文化などを紹介するだけでなく、酒蔵のある地域の特産物や郷土料理なども取り入れることで、観光地として多くの方に興味を持ってもらえるものにしていきたいです。
自由な発想で日本酒や酒蔵を広める活動ができるのは、当社しかできないこと。私たちの取り組みが地域活性のひとつの取っ掛かりになってくれるようなイベントなどを企画していきたいですね。
「日本酒が好き」…趣味から仕事へ
生まれも育ちも神奈川県横浜市。神奈川大学商学部で経営を学び、卒業後は一つの企業で25年以上経理を担当していました。
もともと旅行が好きで、会社の同僚や学生時代の友人とさまざまな土地に足を運び、現地で日本酒を飲む機会がありました。観光の一環で酒蔵見学に行ったことはありましたが、酒蔵を意識して巡りはじめたのはここ数年です。
実際に酒蔵に興味をもち、いろいろな酒蔵に足を運ぶと、日本酒業界は縮小していて倒産する酒蔵が多いという現実を目の当たりにしました。そんな中で、何か私に手伝えることはないかという想いが強くなり、国内・海外に日本酒を広める仕事がしたいと思って会社を立ち上げました。
もちろん、日本酒が好きという気持ちもあるのですが、それ以上に酒蔵の歴史や文化、地域性などに感動したということが大きいです。文化や歴史の眠っている場所として、酒蔵を残していきたいという想いが強くなりました。起業するにあたり、当時勤めていた経理の仕事は、職場環境にも満足していましたが、定年退職してから…というよりは、せっかくやるなら体も十分動く“今”が一番いい時期だと思いました。「失敗しても取り戻せるだろうな」と思っていたので、起業することに迷いはありませんでした。
起業前の約1年間、業務委託のような形で小売りの酒屋の立ち上げに関わっていました。私は、趣味の酒蔵巡りや日本酒関連のイベントへの企画・参加などの経験から、酒蔵さんとのつながりが多いので、酒蔵さんを紹介したり、お酒を仕入れたりするサポートをしていました。そこで一緒にやろうという話も出ていたのですが、お店の基盤が整えば、私ができることは少なくなるので、別の方面でも酒蔵さんに貢献できるように…と、今の事業になりました。