通常インタビュー

ダチョウやオルタナフードを通じて
世の中へ貢献していきたい。

株式会社ノブレス オブリージュ

創業者 加藤 貴之

希少肉食材の産直卸売通信販売業

株式会社ノブレス オブリージュ 創業者 加藤 貴之

ただの『珍しい食材』ではなく、社会問題解決食材=オルタナフード普及に力を入れている株式会社ノブレスオブリージュ様。
東日本大震災を機に、自分がどのように社会貢献していけるのかを考え、行動に移している加藤さんにお話を伺いました。

(インタビュアー 木内)

株式会社ノブレス オブリージュ

震災をきっかけに社会とのあり方を考え始める

━ 起業までの経緯を教えて下さい。

2010年頃、当時働いていた会社の取引先(映像メインの広告会社)の方から「新しく会社を立ち上げるから一緒に参加しないか」と誘われ、おもしろそうだったのでついていきました。初めは順調でしたが、2011年3月11日の東日本大震災が起こり、2カ月先まで入っていた予約が全て無くなってしまったのです。使っていた媒体も運用停止になり、仕事を復旧させるには時間を要する状態になりました。それならばその間に被災地支援のボランティアに行こうと思い立ち、福島県南相馬市に行くことに決めました。現地で、津波でまっさらになってしまった土地や遺体安置所を目の当たりにした時、自然の力の強さや恐ろしさを思い知らされ、人間の都合で世界を作り変えていこうとしたしっぺ返しを受けたのだと感じました。それをきっかけに、人間と社会とのあり方を見直さなくてはいけないなと考え始めた矢先、ダチョウとの出会いがあります。

友人から「後輩のダチョウ牧場のPRを手伝ってあげてよ」と話を持ちかけられ、PRイベントを手伝うことにしました。イベントを開催するにあたり、「ダチョウってどんな生き物?どんなお肉?」などヒアリングをしていくうちに、私がどんどんとのめり込んでいったのです。(笑)

ダチョウの飼育過程は環境に良いため、ダチョウ肉がもっと普及していけば人間と社会の調和が取れるのではないかと考え、ダチョウを通した産業の応援をしていこうと行動していく中で、必然的に起業という形になっていきました。

株式会社ノブレス オブリージュ

“オルタナフード”で社会問題に取り組んでいく

━ 事業内容を教えて下さい。

メインは飲食店様へのダチョウ肉の卸売業です。

しかし今はダチョウの生産が追い付いておらず、シカ、イノシシ、カンガルー、ワニ、たぬき、牛豚鶏も扱っています。家畜化されていない動物に関しても、有害駆除で捕獲した動物を無駄なく使えるよう、肉として捌いてもらい卸しています。私たちは、こうした何かしらの社会問題の解決や改善に繋がるような食べ物を“オルタナフード”と呼んでいて、有害駆除の問題やフードロスを削減しようという取り組み、牡蠣の養殖産業による海水の浄化に繋がる取り組み等、様々な事を行っています。

 

他の事業内容としては、ネット通販、ケータリング、食材を広める為のイベントやセミナー、新しくダチョウ牧場を立ち上げたい人向けのコンサルティング等です。

 

 

株式会社ノブレス オブリージュ

豊富な食材と幅広い知識を提供する

━ 御社の強みや特徴を教えて下さい。

弊社では牛豚鶏のメジャーな肉の取り扱いこそ少ないですが、その代わり様々な種類の肉を取り扱っています。「こんなもの手に入らないでしょ?」というような希少食材も私たちに相談してもらえれば手に入ることもあります。珍しい食材だと、ロバ、カラス、ハクビシンなど。しかもその食材を自分たちのイベントで実際に調理しているので、同じ動物の肉の産地による味の違いや、調理の仕方などに対する幅広い経験と知識を持っています。ですので、飲食店様それぞれに合ったコーディネートや踏み込んだ提案が出来るところも強みです。特にダチョウは、国内外含めた文献を読んで研究していますので、牧場の方に飼育に関してのアドバイスができるほど多くのデータを持っています。

 

株式会社ノブレス オブリージュ

面白すぎる駝鳥の生態

━ ダチョウについて教えて下さい。

ダチョウは成長スピードがとても早い動物です。平均寿命は50~60年ですが、体長2.3m、体重120㎏くらいに育つまで1年しか掛かりません。それだけ成長スピードが早いとたくさん食べそうなイメージがありますが、実はエサの量は少なくて済みます。なぜかというと、栄養の吸収率がとても高いのです。ダチョウは元々サバンナの動物なので、限られた資源から栄養を無駄なく吸収し、たくましく強く生き抜くサバイバル能力が備わっているため、少ないエサでも問題なく大きく育っていけるというわけです。怪我をしてもすぐ治りますし、最高速度70㎞で走ることもでき、視力も1キロ先のものの動きが分かると言われていますので、とても能力の高い動物だと思います。ただ、あまり頭は良くありません。ダチョウの片目が60gに対し、脳みそは40g・・・脳よりも片目の方が大きいんです。(笑)

歴史的観点から見ていくと、ダチョウはそもそも羽を取るため(サンバや宝塚の衣装で使われている派手な羽)に家畜化された動物です。大昔は野性のダチョウを捕まえていましたが、19世紀になり人口が増え羽の需要が増加したことと、大航海時代を迎えアフリカに渡りやすくなったことで狩猟され、ダチョウの数が減少したことが家畜化の始まりです。

車が普及しだすと、ダチョウの羽は邪魔なので売れなくなりましたが、今度はダチョウの皮がファッションに利用されるようになりました。皮を取ると肉が余るので、この頃からダチョウの肉が食べられるようになっていきました。

ダチョウ肉の見た目は、馬肉や牛フィレ肉のようで、味も馬肉に近くとても美味しいんです。現在の法律上、馬肉のように生食可能食材には制定されていませんが、菌検査上の水準は満たしています。表面を焼いて中はレアの状態で食べていただくことが多いですね。価格は、和牛並とまではいきませんが、普通の輸入牛よりは少しお高めです。また、ダチョウの卵は1つで鶏卵20~30個分の容量があり、弊社通販サイトでは1つ4~5,000円で販売しています。先述した通り成長スピードがとても早いので、アメリカの研究によるとポテンシャルで言うと半年、現状で言うと1年程度で食べられるようになります。

株式会社ノブレス オブリージュ

美味しいは正義!

━ 仕事をする上で大切にしている事を教えて下さい。

オルタナフードを広める為には、“社会に良いから”と押し付けるのではなくまずは「美味しい!」と思ってもらうことが先決だと考えています。美味しくなければ共感してもらえず、広まらないと思うからです。弊社では美味しくないものは提供しません。端的に言えば、『美味しいは正義』ですね。(笑)
『美味しくて、なおかつ社会に役立てるならば』と、相手に共感してもらうことを大切にしています。

社名にもしている【noblesse oblige】とは、古代ローマやヨーロッパの価値観で「持てる者は義務を要する。」という意味で、「富や地位を持っている者は、それに紐づくものとして社会に貢献すべき義務がある」という考え方です。その考え方は時代が進むごとに変化してきていると感じていて、『武士道』で有名な新渡戸稲造も、著作『平民道』で、「平民こそが時代を担っていくべきじゃないか、平民の倫理観や市民としての倫理観を、しっかり形成していくべきじゃないか」と説いています。これらを踏まえ、私が【noblesse oblige】を21世紀の言葉で言い直すのであれば、「自分の出来ること、得意なこと、持っているスキルが他の人の役に立つのであれば、貢献し役立てていくべきなのではないか」になると解釈しました。

私の場合のそれは、『ダチョウ』です。ダチョウを通してより良い社会に貢献し役立てていきたいと強く思います。

 

株式会社ノブレス オブリージュ

世の中へダチョウの良さを広めていきたい

━ 今後のビジョンを教えて下さい。

身近なビジョンで言うと、ダチョウ肉の良さを幅広く普及していけるようなダチョウ専門店が出来たら良いと思っています。

ダチョウ肉が普及していけば、使用されるエサや水の量、土地や環境に負荷がかかる部分が抑えられるので、将来的には普通の肉のように、スーパーで購入出来るまでになれば嬉しいです。その中でも国産牛とオージービーフのような、高級なダチョウと手頃に食べられるディリーダチョウとを使い分けられたら、幅が広がり世の中に浸透していきやすいのではないかと考えています。同時に、『美味しいだけじゃなくて環境にも良い』が食べ物を選ぶ基準の一つになっていって欲しいですね。

【ダチョウ肉美味しかった→調べてみたら環境にも良かった→それなら今後もダチョウ肉を選ぼう】という循環が起これば、社会にも良い循環が生まれていくはずです。そんな世の中になっていくことを望んでいます。

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